東風会スタッフの日常

岡山倉敷に6つの歯科医院を展開する医療法人社団東風会

東風会スタッフの日常

歯の神経の保存/グレイスデンタルクリニック 2017/12/28

みなさんこんにちは、グレイスの町田です。
 
虫歯がすごく深いときは、歯の神経を取らざるを得ないことがあります。しかし、基本的には神経は取りたくないものです。
 
昔は、虫歯をきっちり取りきらないとダメだという考えが主流だったようです。ところが、最近は、虫歯をある程度取ってから、薬やセメントをつめて様子をみるという考え方の歯科医師も増えてきているように思います。
 
余談ですが、この、「病巣を除去する」という治療は、病巣の種類によって、徹底的にすべき場合と、それなりで大丈夫な場合があります。
 
たとえば、少しでも悪性の細胞を残したらそこから増殖する悪性腫瘍の場合は、病巣を徹底的に取りきるという考え方は、理屈が通ります。ところが、虫歯は細菌感染症ですので、「細菌が増殖しない条件」にさえすれば、虫歯菌を多少残したとしても、通常問題ありません。周囲をきっちり塞いでしまえば、虫歯菌のエサの供給ルートがなくなるので、虫歯菌は仮死状態になり、虫歯の再発はまず生じません。深い虫歯に対して、下手に徹底的に虫歯を除去すると、歯の神経がダメージを受けて、神経が死んでしまう可能性があります。
 
(ただし、虫歯に感染した部分は軟らかくなっているので、むやみに虫歯を残すと強度の問題や、周囲の封鎖が甘くなって虫歯再発のリスクが高くなります。)
 
深い虫歯に対して神経保存を試みる際、臨床成績の良い治療方法や条件はいくつかありますが、いずれも、治療中あるいは、治療後数日~1週間程度、多少の痛みが出る場合があります。自分の経験上、8~9割は、1週間もすれば自然に症状は治まってくるのですが、この一時的な痛みや違和感を患者さんが受け入れず、「とにかく痛みが嫌だ」となれば、歯の寿命を10~20年ほど失うことを覚悟して、神経を取ることになります。
 
「一時的な痛みを我慢してでも歯の神経を保存すべき」ということが患者さんの常識になれば、治療方針が立てやすくなるな、と日頃考えています。 
 
追記1:神経を除去しても、歯が一生使えるケースは多々ありますので、極端に心配しなくて良いかと思います。ただ、一般的には神経が残っている方が歯は長持ちします。
追記2:医療には例外がつきもので、神経をすみやかに除去した方が良いケースもあります。歯科医師のポリシーで神経保存にこだわりすぎて、患者負担が増えるケースもあるので、よく相談して治療方針を決めたいと考えています。
医療法人社団東風会